フリーエンジニアから見たRPA導入

宮島弥山から瀬戸内海を望む
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 みなさん,こんにちは。

ユーザから見たRPA技術については先に述べましたが,今回はフリーエンジニアの立場から見て企業はRPAをどう導入すべきかを申し上げます。

日本企業にとって,人口減少による市場縮小は影響が大きく,海外に販路を拡大するとともに,国内に留まるのならば生産性の向上は待ったなしの課題です。

そのため,工場生産能力の向上とともに,ホワイトカラーの削減と創造力の向上による業務改革は,避けては通れない処です。

RPAは通常のプログラミングと違い,コーディングが少ないことから,やる気さえあれば社員自身の業務を改革できる強力な武器になり得ます。

その点を考慮して単純反復な仕事への適用以外,創造力の発揮にも活用しようと考える経営者が出てくるのも当然でしょう。

しかし,エクセルVBA等も昔からあったのに,その違いは何かと問われることも多いと思います。

それは,エクセルはエクセルの世界しか自動化することが出来ないと思われていたことが原因です。

実際には,エクセルでもWebAPI(httpリクエスト)対応も出来ますし,外部のファイルにもアクセス可能です。

あるとすれば他の基幹系オンラインシステムへの入出力などがちょっと不得手なくらいでしょう。

あまり知られていませんが,エクセルオブジェクトを使えばエクセルでマウスを動かすことだって出来るんです。IT技術者の中には,何でRPAって騒ぐんだろうと疑問に思う人もいるくらいです。

一方,いろいろなシステムとの自動連係をアピールして,ホワイトカラー業務の自動化を前面に押し出して来たのがRPAでした。

PC上で動作する如何なる画像システムも対象だから,UI(ユーザインタフェース)要素に重点を置いた作りになっています。


  RPAにおけるUI要素の見つけ方

RPAは画面上のターゲット目標を認識して,クリックしたり。読み出したり,書き出したり出来るツールです。

このUI要素を見つける方法はいろいろありますが,この点が各社の特徴であり信頼性の要になります。

この方式で一番多いのは,アドインを作って実装するやり方で,例えばブラウザ内のソースタグ(セレクター)を解析して対象物を認識できるようにします。

最近のオンラインシステムは,画面入出力でブラウザを使うものが多いため,これが多用されています。

ブラウザのソースタグは,アドインを作らなくても,ブラウザメーカと調整できれば,独自のインターフェースプログラムを作ることも可能ですから,そういう方式で行っているRPAもあります。

セレクター構文を使って認識しますので,アドイン等の方式は信頼性が一番高いです。

もう一つの方法としては,画像認識です。

画面上のアイコンや文字を画像としてサーチして,対象物を特定するやり方です。付随的な機能として,特定の位置からx,y座標を指定して対象物を特定する機能も付いています。

さらに加えて,キー入力を使う方法もあります。みなさんご存じのとおり,画面上のキーカーソルは,Tabキーを押すと,順番に目標物を変えるというところに着目した機能です。

大きくは,この三つの機能を組み合わせて,画面上のターゲットを確実に認識するのがRPAの最大ポイントになります。


  RPAの弱点

RPAの機能を知ると,簡単に導入出来て一般の人にも使い易い反面,大きな弱点があることがわかります。

それは,①PCを取り巻く環境変化に弱い事,②予想しない画像が出ると対応できないという点です。

一つ目の弱点は,PCのOSやブラウザ等に依存する関係上,それらがバージョンアップなどで変化するとエラーで止まるということです。

例えば,GoogleChrome等のブラウザはセキュリティ確保のためバージョンアップを繰り返しますが,それに追従してアドインやセレクターの構文(必要な場合のみ)を調整しないと安定稼働させることができません。

また,二つ目の弱点は,想定しない画面が出る時の対応です。

あらかじめ設計時点で全てのイレギュラー画面を予測出来ればいいのですが,どうしても予測できないことがあります。

例えば,エクセル操作中に,突然エクセルを緊急停止してみてください。次に立ち上げると,さっきのファイルを復元しますかと操作を求めてきます。

ですからあらかじめ全てのイレギュラーを予想するのは困難です。不具合の都度,メンテナンスして行くことになります。

重要な業務の場合は,あまり停止できませんから,迅速な対応が求められます。

結果としてエラー時の自動連絡機能や動作状況監視・操作,遠隔モニタリングなどの工夫が必要になります。


  RPAを安定稼働させるには

業務を自動化するということは,私たちが人として通常行っている行為をロボットが代行するということになりますので,実際,止まることがあっては困ります。

そのため,RPAシステムが安定稼働することが肝要です。

安定稼働させるためには,いくつかポイントがあります。

まず,第一に,業務自動化の設計時点で,人間との協調を考えた業務フローをよく考えて作ることです。

何でもそうですが,システムは闇雲に作っても上手くいきません。

新しい仕事の流れの中で,どこをどう機械化するのか,どこで人間がチェックするのか,証憑類はどこで保存するのか,RPAが途中で止まっても,再度,実行すれば対応できるようになっているか,エラー時のメンテナンス体制は緊急かつ十分か,品質は設計時に確保できる仕様になっているかなど,数え上げればキリがありません。

このRPA設計(シナリオ作成)が極めて重要になります。

第二に,RPAに全てさせるのではなくて,エクセルVBAで出来る所や,GAS(Google Apps Script)で出来るところは,おまかせすることです。

RPAは人間による画面操作のコピーですから,何でもできますが,エクセル画面での並び替えやコピー&ペーストなどは,圧倒的にエクセルの方が早くて安定しています。

そういうものは積極的にマクロを使って,部品化するのが望ましい。

RPAは,人間に代わって動作指示を行い,結果を次のシステムに繋ぐ橋渡しに撤した方が良いと思います。

RPAの値段からするとちょっとお高い気もしますが,その点は考えようです。

第三に,RPAがよく止まる原因は,先ほど予期しない画面と申し上げましたが,それ以外にも,システム環境による時があります。

よくあるのがセキュリティポリシーです。企業によって違いますが,セキュリティ対策としてPCに対して数分間操作がないとロックがかかる設定をしている企業もあったり,タスクスケジューラだって設定を間違えると数日後に停止する場合もあります。

インターネットダウンロード容量に制限をかけたり,外部サイトにアクセス制限をしていたりもします。

これらを踏まえて安定稼働できるよう,エラー発生時は緊急に対応できるよう対策を講じる必要があります。


  RPAの選定について

RPAは,「サーバ型」「デスクトップ型」「クラウド型」の3種類あり,それぞれに特徴がありますので,自分の企業のニーズを踏まえて決定する必要がありますが,集中的に用いる場合はサーバ型かデスクトップ型になるでしょう。

安価な方式としてクラウド型がありますが,クラウド型は企業によっては外部のソリューション会社との接続を許可していない会社もあるため検討が必要です。

また,RPAツールは高価なため,どのくらいの数のロボットを稼働させるか,スケジュール起動(アンアテンド型)が必要か,手起動(アテンド型)だけでよいかによって費用が大きく変わります。

RPAを業務改革や業務改善の道具として使う場合は,数が多くなるため,投資対効果をよく考えて導入をお諮りください。

デスクトップ型などでは,手動型(アテンド)の場合,無料のものもありますので,それを使って軌道に乗ってきたら新たな選択肢を考えるのもいいかもしれません。

ただ,RPAは互換性がありませんので,簡単にツールを変更できないと思った方が良いと思います。

マウスのクリックやブラウザの入出力だけであれば,オープンソフトを使う方法もありますので,安価に試行錯誤を繰り返してから,RPAを本格的に選定する方法もお勧めです。


  フリーエンジニアから見たRPAツール

業務自動化は,これから避けて通れない道筋です。

そのため,RPAはとても魅力的なツールだと思います。

ただ,フリーエンジニアの立場からすると,メーカのRPAは有料で高価なため,クライアントに選択肢として進めにくいというのが本音です。

なぜなら,RPAも日々進化し機能追加しているため,それを試行錯誤で試せる機会をフリーエンジニアのような弱い立場では作ることが出来ないからです。

メーカは,インターネットを使ってアカデミーを開いたりパートナーIT会社を作るだけで,ユーザを十分に確保できると思っているようですが,大手企業には通用しても,小企業まで浸透させるのはとても無理でしょう。

小企業の場合,それほど余裕があるわけではないので,大手のIT会社等を通じてRPAを導入するのは投資に見合わない場合が多いです。

ましてや社員の教育や育成にかける余裕はないのが実情だと思います。

導入したRPAが会社の環境に合わない場合もあり,そういう場合はRPAによる自動化を断念することに成り兼ねません。

企業内にRPA推進者を決め,ITを活用できる要員を増やす方向で,こつこつと実績を積み上げる必要があります。

そして長期に伴奏してくれるフリーエンジニアなどと一緒に,会社に最適な自動化の道筋をトライアル・アンド・エラーを繰り返しながら模索されることをお勧めします。

今のところ,フリーエンジニアのような小規模なデベロッパーにも試験できる環境を提供してくれているRPAは,私の知る限りでは,メーカ系ではUiPathとMicrosoft Power Automate Desktopだけです。

しかし,それであってもいろいろな制限があります。  

勢い,フリーエンジニアとしては,OpenなRPAツールを使って中小事業者をサポートするしかないかと思うに至る今日この頃です。

今後,フリーエンジニアにも優しいRPAツールの出現を望んで止みません。


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