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山口県毛利庭園にて |
Windows11移行に伴い,現在Windows10下で稼働していたシステムを移設しなくてはならなくなりました。WSLもそのひとつです。
WSLとは「Windows Subsystem for Linux」といい、Windows(64bit版)上で動作するLinuxの実行環境です。
このWSLには,WSL1とWSL2という2つのバージョンが存在し,WSL1は,Windowsカーネル上でLXCoreというサブシステムがLinuxの実行環境を作ります。
この環境は,Windowsが使うIPアドレスを直接使えるなどのメリットがありますが,Linuxを使う環境としては不完全なため,インストールやコマンドに制限を受ける事があります。
そこで,ほとんどのLinuxソフトを扱えるようにするため,2019年2月にWSL2バージョンがサポートされました。
このバージョンでは,Hyper-Vと呼ばれる仮想環境上にLinuxカーネルを動作させるため,ほとんどのLinuxアプリを動作できるようになります。
今ではWindows
Serverでも動作させることが出来ますので,一つの物理媒体にWindowsとLinuxという二つのOSを共存させることが可能になりました。
WSL2を利用することで手元のWindows
OSを,これまでと同様に使いながら同じWindowsサーバ上でLinuxも動かすことが出来るわけです。
WSL2でLinuxを使うにあたり、いちいちOSを再起動する必要はありません。あたかもWindowsにインストールされているソフトウェアの1つのように,Linuxアプリを利用できます。
今回は,windows11移行に伴いWSL2再構築に係る作業を取り纏めることにしました。
なお,PC環境はWindows11 Proエディションを前提としています。Windows11 Home エディションの方はHyper-Vのインストールが必要です。
それでは,学習を始めます。
1.Windows11におけるWSLコマンドによるインストール方法
Windows上でWSLを使う場合,WSL1とWSL2のどちらを使うかを選択する必要がありますが,LinuxOS上でApacheやWordPressなどを使う場合は,よりLinux環境に近いWSL2を使う方が応用範囲が広く最適です。
そのため,今回はWSL2のインストールを中心に記述します。なお,WSL2はWindows 10
(x64システムではバージョン 1903 以降,ARM64システムでは バージョン 2004
以降 ) または Windows 11 の64bitOSで実行可能です。
また,Windows11では,「予め用意されたWSLコマンドを使ってWindowsサブシステムをインストールすることで,いろいろな操作を一括で処理してくれます」と言われますが,実証してみると上手くいきませんでした。
WSLコマンドによるインストール方法としては,Windowsの検索画面から「コマンドプロンプト」あるいは「windows PowerShell」を管理者として起動し,以下のコマンドを実行してください。
コード
wsl --install
実証の結果,このコマンドは以下3つの操作が実行されるようです。
- WSL2用Linuxカーネルをダウンロード・インストールする
- 「Linux用Windowsサブシステム(WSL)」と「Hyper-V」を有効化する
- WSL2を既定のバージョンとする
しかし,Linux「Ubuntuディストリビューション」のインストールについては,2項の【3】以降を実行する必要があります。
また,コントロールパネルの「プログラム」→「Windowsの機能の有効化または無効化」画面で,「Linux用Windowsサブシステム(WSL)」項目と「Hyper-V」項目にチェックが自動で入りませんでした。完全にはサポートされていないようです。
一応,これでも動くと思いますが,最終的には「wsl -l -v」コマンドでバージョン番号「2」と「Running」が出ることを確認してください。
次項に,従来のインストール手順を記述します。Windows11でも従来の方法でインストールした方が無難だとは思います。
2.従来のWSL2インストール手順
WSL2の従来のインストール方法では,以下の操作を進めて行きます。
【1】「Linux用Windowsサブシステム(WSL)」と「Hyper-V」を有効化
WSL2は,Windows11の仮想環境上で動作しますので,まずは仮想環境構築に係るWindowsの機能を有効化します。
操作手順は以下の通りです。
①Windowsの「スタートボタン」→「Windowsシステムツール」→「コントロールパネル」→「プログラム」→「Windowsの機能の有効化または無効化」と進む
②「Windowsの機能の有効化または無効化」画面が表示される。「Linux用Windowsサブシステム(WSL)」と「Hyper-V」にチェックを入れ「OK」をクリックする。
③必要な変更が完了したら,「今すぐ再起動(N)」ボタンをクリックします。あるいは,パソコンの「スタート」アイコンから「電源」を立ち上げ直してください。
これにより,Windows上に仮想マシン環境が構築されます。
④wslアプリをアップデートする。
「Windows」+「R」キーを押して「ファイル名を指定して実行」画面を表示します、ファイル名欄に「cmd」と入力し「OK」をクリックすると,コマンドプロンプト(黒い画面)が表示されますので、以下のコマンドを入力しWSLを最新バージョンにアップデートします。
コード
wsl --update
「このアプリがデバイスに変更を与えること許可しますか」と出たら,「はい」をクリックします。最後に電源を立ち上げ直してください。
【2】WSL2を既定のバージョンとして利用できるようにする
Linuxディストリビューションを動作させる既定のバージョンとして,WSL2を既定のバージョンとするため、以下の操作を実行します。
「Windows」+「R」キーを押して「ファイル名を指定して実行」画面を表示します、ファイル名欄に「cmd」と入力し「OK」をクリックすると,コマンドプロンプト(黒い画面)が表示されますので、以下のコマンドを入力してWSL2を既定バージョンにします。
コード
wsl --set-default-version 2
「この操作は正しく終了しました。」となればOKです。
【3】Linuxディストリビューションをインストールする。
続いて,WSL2にLinuxディストリビューションをインストールしますが,これには主にコマンドを使う方法と,Microsoft
Storeからインストールする方法があります。
ここでは,既にコマンドプロンプト(黒い画面)が開いていますので,コマンドでインストールします。
①使用可能なディストリビーションを確認するため,以下のコマンドを入力します。
コード
wsl --list --online
以下のようなリストが表示されます。
NAME
FRIENDRY NAME
Ubuntu
Ubuntu
Debian
Debian GNU/Linux
Kali-linux
Kali linux Rolling
Ubuntu-18.04
Ubuntu 18.04 LTS
Ubuntu-20.04
Ubuntu 20.04 LTS
Ubuntu-22.04
Ubuntu 22.04 LTS
Ubuntu-24.04
Ubuntu 24.04 LTS
今回は,最新の「Ubuntu 24.04 LTS」を使います。
②Linuxディストリビューションをインストールする。
コマンドプロンプトに次のコマンドを入力します。
コード
wsl --install Ubuntu-24.04
途中,「Enter new UNIX username」,「New password」,「Retype new
password」と聴かれますので各々入力します。忘れないようメモして下さい。
また,Microsoft Storeを使う方法もあります。その場合は次のようにします。
- Windowsの「スタートボタン」→「Microsoft Store」と進む
- 検索欄に「ubuntu」と入力して検索を実行する
- 検索結果から「ubuntu 24.04.1LTS」を選択して「入手」アイコンをクリックする。
- 次の画面で「開く」をクリックする※インストールが開始されます。「Enter new UNIX username」,「New password」,「Retype new password」と聴かれるのは同じです。
これで,従来のLinuxのインストール作業は完了です。確認のため,次の作業をします。
【注意】
なお,ここまでの過程で「0x80370102」というRegisterエラーが発生することがあります。
これは,パソコンのBIOSにおいて「Virtualization
Technology」という仮想化機能が「Disabled(無効)」になっているためで,これを「Enabled(有効)」に変更する必要があります。
今回の実証では,一部のパソコンのBIOSで「System
Configuration」というセクション内に該当する個所がありました。
3.WSLバージョンの確認とバージョンの設定方法
設定されているWSLのバージョンを確認します。
【1】コマンドプロンプトを表示します。
「Windows」+「R」キーを押す ->「ファイル名を指定して実行」ー>名前欄に「cmd」と入力 ->「OK」をクリック
【2】以下コマンドを入力し,WSLのバージョンを確認します。
コード
wsl -l -v
以下のようなメッセージが表示されます。
NAME
STATE VERSION
* Ubuntu-24.04 stopped
2
【3】WSL2<->WSL1の変換は、以下の操作を実行します。
コード
wsl --set-default-version 1
これでWSL1になります。同じようにWSL2に戻すこともできます。
コード
wsl --set-default-version 2
4.WSL2の起動方法
ここまでで,WSLのインストールは完了しましたが,現在,Ubuntuは停止状態にありますので起動させます。これには,いろいろな方法があります。
【1】バッチファイルを作って起動する。
一番オーソドックスな方法として,以下のようなバッチファイルを作って起動させます。
コード
@echo off
cd C:\Users\<ユーザ名>
start /MIN wsl -d ubuntu-24.04 -u root --cd ~
exit
<ユーザ名>には,Windowsのユーザアカウント名を入れます。startコマンドを使って「wsl」と「Linuxディストリビューション」を起動させています。「/MIN」を入れていますので,コマンドプロンプト画面は表示されません。見たい時はWindowsのタスクバーから表示します。
また,ここでは「root」ユーザで起動させていますが,セキュリティ上,出来ればインストール時に設定した「ユーザ名」で起動するのが望ましいです。
「--cd ~」とあるのは,「Linuxディストリビューション」起動後にホームディレクトリへチェンジするための指定です。
【2】Windows11のアプリから起動させる。
Windowsのスタートから入って,「Ubuntu
24.04.1LTS」というアプリを見つけて起動します。デスクトップ画面内にショートカットを作ることもできます。
【3】Windows TerminalでLinuxを起動する。
Windows11では,すでに「Windows
Terminal」というソフトが入っていますので,これをWindows検索画面から「ターミナル」と打って起動させます。
続いて,上部にある「V」マークをクリックしてプルダウンメニューの中から「Ubuntu
24.04.1 LTS」をクリックします。

5.まとめ
ここまでで,WSL2を起動するところまで来ました。後はファイルの操作方法,バックアップの取り方,IPアドレスに係るネットワークの設定方法などを記述したいと思いますが,長くなりましたので次回に回します。
WSL2は,Windows上で動くLinuxです。物理サーバを別に設けなくても,大体のLinuxアプリを起動させることが出来ます。
一方で,本当のLinuxに及ばない処もあります。例えば「systemctl」という命令は,アプリを起動する時に使うLinuxにとっては重要な命令ですが,WSL2で使えるようになったのはごく最近のことです。
ネットワークについても進化している途中で,Localhost「127.0.0.1」にアクセス出来るようになったのも比較的最近です。
このようにWSL2は改良を続けており,これから段々と使い易くなっていくことでしょう。
しかし,WSL2は仕様変更も多く,いままで使えた命令が使えなくなることも考えられます。
それらのマイナス点を考慮しても,簡単にLinuxを試すことが出来ますので,まだ試したことのない方は是非お試しください。
以上,参考になれば幸いです。
それでは,楽しいITリテラシーライフをお送りください。
(ご注意)情報の正確性を期していますが,実施される場合には自己責任でお願いします。
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